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2025/2/12

Google AIO時代のSEO&PPC:CTR急落の背景と対策

ホログラフィック チャートとグラフを備えた未来的なデータ グラフィックを特徴とするデジタル イラストレーション。日本語のテキストには「Google AIO時代のSEO & PPC」と「CTR急落の背景と対策」と書かれており、SEOの洞察がシームレスに織り込まれており、すべて濃い青色の背景に設定されています。.

検索エンジン市場において、Googleが提供するAI Overviews(以下、AIO)が急速に普及し始めています。以前から、検索結果ページ(SERP)上に表示されるリッチスニペットやナレッジパネルなどは、ユーザーがわざわざウェブサイトにクリックしてアクセスしなくても情報を得られる「ゼロクリック検索」を促してきました。しかし近年では、AIOによる生成コンテンツがさらに充実したことで、検索結果そのものから離脱せずに完結してしまうケースが増えているのです。

その影響を受けて、従来のSEOやPPC(リスティング広告)の枠組みでのクリック獲得は次第に難しくなっています。特にトラフィック獲得の大半をGoogleに依存しているサイトや広告主にとっては、CTR(クリック率)の大幅な低下が見過ごせないリスクとなりつつあります。本記事では、実際のデータから得られた知見をベースに、AIOがもたらすCTRの変化、およびそれに対する具体的な戦略的アプローチを考察します。

AIOとは何か:検索体験の変容

AI Overviews(AIO)は、検索クエリに応じてGoogleが独自の生成AIを活用し、情報の要約や補足をSERP上に直接表示する機能を指します。いわゆる「生成AIによる回答枠」が表示されることで、ユーザーが検索結果一覧を細かく閲覧する前に「答え」に近い情報を得られる仕組みが整備されているのです。

例えば、以前のリッチスニペットやFeatured Snippetsも、ユーザーに対して瞬時に回答を提示してきましたが、AIOはさらに多角的かつ深掘りした情報を提供できるのが特徴です。こうしたAIOの台頭は、特に「純粋な情報収集系のクエリ」において、ユーザーが検索結果の他のリンクをクリックする動機を大きく削ぎ落としてしまう可能性があります。

測定データと調査手法

今回紹介する調査では、およそ1万件のキーワードを対象に次の条件・方法で分析が行われました。

1. キーワード選定

– インフォメーショナル(情報収集系)のクエリを中心に、上位20位以内にランクインしているキーワードのみを対象。
– さらに上位キーワードの想定トラフィックが大きいものから順に優先的に分析することで、AIOが及ぼす影響が高そうなワードを抽出。

2. 主要データソースの統合

– Google Ads(PPCにおけるクリック率の実績)
– Google Search Console(SEOにおけるオーガニックCTRの実績)
– ZipTie AIOデータ(どの検索結果にAIOが出現しているか、またAIOがどのサイトのコンテンツを参照しているか)

3. AIOの出現状況による分類

– 「2024年1月から2025年1月」の期間を対象に、AIOが「最終的に登場するキーワード」と「登場しないキーワード」に二分。
– それぞれの期間中におけるCTRの推移を、オーガニック検索と有料検索に分けて詳細に観測。

4. AIOにおける「自社所有」の有無

– AIOが参照する情報が自社のコンテンツを引用している場合と、競合他社・別のサイトが参照されている場合とでCTRに差異があるかを分析。

上記の方法により、AIOの影響度を定量的に測る試みが行われました。調査の大まかな概容については、こちらの投稿もぜひご覧ください。

主な調査結果

1. AIOが出現するクエリはもともとCTRが低め

調査時点でAIOが後から追加表示されるようになったクエリは、AIOが無かった時期でもクリック率が低めに推移していたという事実が判明しました。これは過去のFeatured Snippetsに関する知見とも合致し、「もともとユーザーが詳細ページを開かなくても済ませるタイプのクエリ」がAIOを呼び込みやすいとも考えられます。

2. AIOが表示されないクエリのオーガニックCTRは上昇傾向

AIOが表示されなかったクエリ群は、前年同期と比較するとオーガニックCTRが上昇しているケースが多く報告されました。これはAIOが存在するクエリのほうにユーザーの関心が集中しがちな一方、それとは別の検索ニーズを狙ったキーワードにおいては競合が減少し、逆にクリック獲得のチャンスが増えている可能性を示唆します。ユーザーがそもそもAIOを呼び込むような質問をしないクエリは、今後も従来型のSEO施策が有効に機能しうるといえるでしょう。

3. AIOが表示されるクエリではオーガニックCTRが大幅に減少

一方、AIOが表示されるクエリ領域では、オーガニックCTRが前年の1.41%から0.64%へと半減に近い落ち込みを記録しました。AIOがSERP上部に大きく表示されることで、ユーザーの視線がそこに集中し、他の検索結果をクリックしないまま離脱するパターンが増えているとみられます。

4. PPC(広告)のCTRも全体的に下落

AIOの有無にかかわらず、有料広告のクリック率も著しく下がっていることが確認されています。これはAI検索やSNS、あるいはプライベートコミュニティなど、Google以外の情報チャネルを活用するユーザーが増えたことに加え、ユーザーのGoogle広告に対する「広告疲れ」が進行している可能性があると推測されます。

5. AIOに「自社ブランド」が引用されるとCTRが上昇

一方、AIOの表示内容が自社発のコンテンツを含んだり、ブランド名が言及されていたりすると、オーガニック検索・PPCともにCTRが高まる傾向が見られました。この場合、ユーザーの信頼感が高まりやすく、AIO経由でブランド認知が向上する一種の「ブランディング効果」が救済策となり得ます。

CTRが下落する背景:ゼロクリック時代への突入

検索結果ページ上に答えが提示されることで、ユーザーがわざわざ別サイトにアクセスしなくても疑問を解決してしまう現象は、いわゆるゼロクリック検索としてかねてより注目されてきました。特に以下のような要素が重なり合うことで、CTRはさらに落ちやすくなっています。

1. AIOのリッチ化・多様化

AIOはユーザーの文脈や意図に合わせて回答を生成するため、単なる定型的な抜粋以上の、より詳細な要約や関連リンクを表示できるように進化しています。これは「従来のFeatured Snippets以上にワンストップで問題解決を図れる環境」が整っていることを意味します。

2. SERPデザインの変化

広告枠が増加し、ページ上部を占有するケースが増えたことに加え、AIOが検索上位に大きく表示されると、ユーザーの視点を自然検索や広告枠からさらに奪う形になります。結果として、オーガニック・有料を問わずCTRの総体がじわじわと削られているのです。

3. ユーザー行動の多様化

短文検索をGoogleに投げるよりも、ChatGPTのような生成AIを直接利用して長文のやりとりをしたり、TikTokやInstagramの検索機能を使ってビジュアル中心の情報収集をするユーザーが増加しています。このようなユーザーシフトは、トラフィックの分散化を加速させる要因です。

CTR低下に対抗する戦略

SEOやPPCの視点から、AIOを巡る現状にどう対処すればよいのでしょうか。ここでは、具体的な戦略とヒントを整理します。

1. AIOが表示されないクエリを狙う

AIOが現れにくいクエリは、現在オーガニックCTRの上昇傾向がみられます。具体的には、ユーザーが探索的に複数の候補をチェックしたい場合や、購入選択のためにスペック比較を含む詳細情報を集めたい場合など、AIOの「単一回答」が不十分となりがちなテーマです。こうしたキーワードを洗い出し、従来のSEOで上位を狙うことが、短期的には効果的な施策となり得ます。

2. AIOを「味方」にする最適化

AIOが引用しやすい構造化データや信頼性の高いコンテンツを提供することで、AIOの本文中に自社の情報が取り上げられる可能性があります。実際の調査では、AIOへ参照されることでオーガニックCTRが0.74%から1.02%に改善した、PPCが7.89%から11%に伸びたというデータが示されています。AIO対策としては、E-E-A-TExpertise, Experience, Authoritativeness, Trustworthiness)の原則を強化し、権威性と専門性を担保するコンテンツがより重要となるでしょう。

3. 検索意図の再確認(クエリセグメンテーション)

検索意図が「知りたい系」なのか「やりたい系」なのか、あるいは「購入したい系」なのかを分類し、AIOがどのように介在しやすいかを把握することが大切です。比較検証の結果、すでにAIOが出やすい分野はゼロクリックで終わる可能性が高いので、いわゆるコンバージョン喚起のためには、別の戦略やプラットフォームを活用したほうが効率的な場合もあります。

4. 有料広告のクリエイティブ・入札戦略の見直し

広告CTR全般が下がっている今こそ、見込み顧客が欲しい情報を的確に盛り込んだ広告文の見直しや、SNS広告のテストを組み合わせるなど、柔軟な対策が求められます。従来の「検索キーワードと入札単価を調整するだけ」のアプローチでは、AIOに奪われた流入を十分に補えない可能性があるのです。

5. Google以外へのチャネル拡大

Googleトラフィックへの依存度を下げるために、YouTube最適化やSNS、コミュニティマーケティングなど、多角的なアプローチを取り入れるのも有力です。とりわけ若年層をターゲットとする場合、TikTokやInstagram、Threadsのようなプラットフォームを活用して情報発信やエンゲージメントを高めることは、今後さらに重要になります。

経営層への提言:柔軟かつ長期的な投資

マーケティング部門や経営層にとっては、予算の使い道やKPIの設定を見直す視点が欠かせません。AIOの普及に伴うCTR低下は、一朝一夕で元に戻る見込みが低いからです。以下の点を意識することで、持続的なデジタルマーケティング戦略を構築できます。

1. AI関連の検証とトラッキングツールへの投資

AIOや生成AIの検索可視化を追跡するツール(例:ZipTieやSeer Interactive独自のGenerative AIトラッカーなど)への投資を検討することが重要です。どのクエリにAIOが発生し、自社コンテンツがどの程度参照されているのかを可視化できれば、柔軟で迅速な意思決定につながります。

2. 予算再配分の柔軟性

市場の急変動を見越して、四半期単位など短いスパンで予算を見直す体制を整えましょう。SEOやPPCへの固定的な費用配分だけでなく、インフルエンサー協業やSNSキャンペーンにも一定のリソースを割り当てるなど、多面的な投資が必要です。

3. 新たなKPI設定

CTRやクリック数のみをKPI重要業績評価指標)とするのではなく、サイト滞在時間・ブランド検索数・エンゲージメント率など、より包括的な指標を取り入れる必要があります。AIOが存在する検索領域では、期待したCTRが得られないのが当たり前になってきているので、部門評価や代理店評価の基準も再考する時期にきています。

4. 社内連携・シナジーの創発

AIOが取りこぼしているクエリを狙うSEOチームと、AIO内でのブランド露出を高めようとするPR/広告チームとが連携を強めることも重要です。特にAIOが登場するのに自社コンテンツが引用されていない場合、社内のコンテンツ担当や広報担当と協力して知名度を高めたり、信頼される情報源として認識されるよう働きかけると効果的です。

今後の見通しとまとめ

AIOが検索体験を塗り替えつつある今、企業がとりうる選択肢は一つではありません。検索結果ページから直接流入を得るチャンスが減る一方、AIOそのものに露出している情報へユーザーが信頼感を寄せることで、ブランド価値やクリック率が逆に高まるケースもあります。大切なのは、AIOが表示されるかどうか、またそのAIOが自社コンテンツからの引用であるかどうかなど、検索クエリ単位でデータをかみ砕いて分析することです。

そして、AIOが表示されないキーワード群への取り組みを強化する一方、AIOが発生する領域でも自社に有利に働くような構造化データや被リンク獲得を図り、参加する「舞台」を選びながら戦略を立てることが肝要です。BtoB向けのデジタルマーケティングやEコマース領域でも、ユーザー体験を軸にした最適化は引き続き求められます。

一方で、大きな潮流としては「単なるクリック依存型の認知獲得」だけではビジネスをスケールしにくい時代へと突入しつつあります。SNSやコミュニティ、オウンドメディア、実店舗など、多面的なブランドコミュニケーションを考慮することで、AIO時代の変化がもたらすリスクをカバーしながらも新たな機会を見いだすことが可能です。

さらなる情報・参考リンク

より詳細な調査データや考察は、元記事のGoogle AIO Impact – SEO & PPC CTRs at all time low (https://www.seerinteractive.com/insights/ctr-aio) でご確認いただけます。興味のある方はぜひご覧ください。この記事では、CTR減少が起こるメカニズムやクエリごとの具体例、KPIの再考などについて、さらに深掘りした見解が紹介されています。

また、以下のポイントも併せて確認すると、AIO時代の検索戦略構築に役立つでしょう。
Generative Engine Optimization(GEO)のはじめ方
– AI発回答のトラッキングと分析のベストプラクティス
– AI時代にどのようにKPIをアップデートするか

終わりに

AIOは、ユーザーがより短いフローで回答を得られる利便性をもたらす一方、クリック率の低下という課題を引き起こしています。検索エンジン最適化や広告戦略においては、AIOが登場するクエリとそうでないクエリを丁寧にセグメント化し、それぞれに適したアプローチを柔軟に取ることが重要になるでしょう。

今後、Googleが検索のユーザー体験をどのように進化させていくのか、そして競合プラットフォームがどの程度シェアを奪っていくのかは、引き続き注視すべきポイントです。検索マーケティングの世界は今まさに転換期を迎えていますが、こうした変化を先んじて利用することで、新たな成長機会を掴む可能性を高められるはずです。

本記事が、AIO時代におけるCTRの現状把握と施策の検討に少しでも貢献できれば幸いです。今後も検索およびAIの動向を継続的にウォッチしつつ、最適な手段を検証・実践していきましょう。

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